将進酒 李白
李白734年李白33歳の秋、李白は友人に招かれて嵩山(すうざん…1510メートル。河南省にある山で、中国五岳の1つ。少林寺で有名。北側を黄河が流れる)に登り、友人の山荘で、詩に登場する岑夫子、丹丘生と酒盛りをした時の詩
(中国語スクリプトより)
君見ずや黄河の水天上より来たるを
奔流して海に到りて復(また)回(かえ)らざるを
君見ずや高堂に明鏡の白髪を悲しむを
朝(あした)には青糸(せいし)の如きも暮(くれ)には雪となる
人生意を得れば須(すべか)らく歓(かん)を尽くすべく
金樽をして空(むな)しく月に対せしむる莫(なか)れ
天の我が材を生ずる必ず用有ればなり
千金散じ尽くせば還(ま)た復(ま)た来る
羊を烹(に)、牛を宰(ほふ)りて且(しば)らく楽しみを為(な)せ
会(かなら)ず須(すべか)らく一飲(いちいん)三百杯なるべし
(朗読)
岑夫子(しんふうし)よ、丹丘生(たんきゅうせい)よ
将(まさ)に酒を進めんとす、杯停(とど)むること莫(なか)れ
君が与(ため)に一曲を歌わん
請う君我が為に耳を傾けて聴け
鐘鼓饌玉(せんぎょく)は貴(とうと)ぶに足らず
只(ただ)願わくば長(とこしな)えに酔いて醒(さ)むるを用いず
古来聖賢は皆寂寞(せきばく)
只(ただ)飮者のみ其の名を留(とど)むる有る
陳王昔時平楽(へいらく)に宴(えん)し
斗酒十千歓謔(かんぎゃく)を恣(ほしいまま)にす
主人何為(なんす)れぞ銭少しと言うや
径(ただ)ちに須(すべか)らく沽(か)い取りて君に対して酌(く)むべし
五花の馬
千金の裘(かわごろも)
児(じ)を呼び将(も)ち出して美酒に換えしめ
爾(なんじ)と同(とも)に銷(け)さん万古の愁い
(訳)
君は見ないか黄河の水は天上から発し
奔流して東海に至ってもう帰らないのを
君は見ないか高殿の明鏡に写して白髪を悲しむ人を
朝には黒糸のようだったのが夕方には雪のようになっているのだ。
人間の一生は心のままに面白いことをし尽せよ
黄金の酒樽をあだに月に照らさせておくな
天がわが才能を与えたのは必ず役立てるためだ
大金を使いつくしてもまた戻ってくる
羊を煮たり牛を割いたりして楽しもう
一度の宴会で三百杯は飲まねばならない
(朗読)
岑夫子(しんふうし)よ、丹丘生(たんきゅうせい)よ
酒をすすめるが杯を置いてはならない
どうかきみたち私のために耳を傾けて聞いて下され
贅沢な暮らしなどどうでもいい
只願うのはいつまでも酔っていて醒めないことだ
古来聖人賢者とは寂しいものだ
ただ酒飲みだけがその名を残している
陳王は昔平楽観で宴会し
一斗一万文の酒を飲んで大騒ぎしたそうだ
主人の私がどうして金が不足などというものか
すぐに酒を買ってきて互いに酌み交わそう
美しい馬と
高価な毛皮の服
これらを召使に持たせうまい酒と換えさせ
君たちと一緒に尽きぬこの愁いを消そうではないか